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【AI⑩】AIはセレンディピティの機会損失の可能性もある!

今日の気づきは「AIはセレンディピティの機会損失の可能性もある!」です。

今日は以下の記事からの気づきです。
「AI×ロボ」で実験効率化 創薬や素材開発に革新:日本経済新聞

本記事を要約すると、産業技術総合研究所発のスタートアップ、ロボティック・バイオロジー・インスティテュートがヒト型ロボット「まほろ」とAIを組み合わせ、再生医療用の細胞培養実験を効率化することに成功した、と報じています。

本記事ではロボットとAIの組合せによる実験のメリットが2つ挙げられています。

①難しい操作も再現性が高い
iPS細胞から目の治療に使う網膜色素上皮細胞を培養する実験では、試薬濃度、注入タイミングなどの数値化できる指標のみならず、ピペット操作、撹拌強度などの手技までもが結果に影響を与えます。

よって高いスキルを持つ特定の研究者しか担えない作業でしたが、まほろによって効率的に最適条件を試行錯誤できるようになったそうです。

②大量のデータを扱える
東京大学の長藤圭介准教授らは、約3万3千通りある、燃料電池や蓄電池に使われる様々な重要な膜の製造条件の最適化にロボットとAIを活用したそうです。

結果、ひび割れの起こる確率を40~50%から3%以下にするには1段階で加熱するよりも2段階に分けた方が良いと分かったそうです。

2つのメリットがあるものの、ロボットとAIは応用できる範囲はまだ限られていることが今後の課題だそうです。

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本記事を読んで私は、AIでの実験条件最適化は、単純作業が8割以上を占める研究においては素晴らしい改善と感じつつ、一方で2つの懸念が湧きました。

①思考過程がブラックボックス化されてしまうのではないか
AI、ディープラーニングのデメリットとして、特徴量になぜそれを選んだのかがブラックボックス化されてしまうことが挙げられます。

私は大学と大学院で化学の研究に携わっていましたが、ある実験の結果から、次の実験条件を考え出す思考過程は、他の実験でも有効になることが多いです。

よって、関連論文を検索して、もし”The conditions were optimized by AI.”としか書かれていなければ、非常に困ります(こんな記述で査読通るのか疑問ですが笑)。

私の中で似た(?)経験としては、参照論文の思考過程の記載が短く分かりにくかった時、私の知らない計算ツールを使用していて再現性が低い時などは、非常に困った経験があります。

今後、もし一部の分野でAIによる条件探索が広まっても、その実験の思考過程が、他のAIの向かない分野方面で生かされないというのが懸念だと気づきました。

②セレンディピティの機会損失の可能性がある
AIは、細胞の培養条件、膜のひび割れ防止条件など、多くの条件から指示された特定の条件だけを探索することにかけては、確かに人間より効率的だと思います。

しかし、もしかすると探索の過程で、他の観点での発見(セレンディピティ)の機会を失う可能性もあるかもしれないと気づきました。

私の中で似た(?)経験としては、分子量200の生成物を目的とする実験をしていた時、分子量150、250、300にも小さなピークを見つけたことがありました(分子量は少し変えてあります)。

目的物は4つの構成部品が四角形に繋がった化合物だったのですが、分子量150は三角形、250は五角形、300は六角形であると気づき、それが原著論文の主題にもなりました。

セレンディピティの有名な例で言うと、偶然混ざったアオカビのコンタミネーションから発見された抗菌物質「ペニシリン」があり、これは数百万人の人命を救っています。

よって、人類の歴史は狙っていなかった事象からの偶然の産物も数多くあり、セレンディピティの機会損失は見過ごせないと気づきました。

人間は失敗もするし、気が散ることも多いですが、それもまた良い所なのではないでしょうか。

以上、今日の気づきは「AIはセレンディピティの機会損失の可能性もある!」でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
(アイキャッチ画像出典:ロボティック・バイオロジー・インスティテュートのHP

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まさひろ
20代会社員のまさひろです。 相手から必要とされるビジネスマン目指し、 毎日気づいたことを書き綴っていきます

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