今日の気づきは「米国に地下トンネルがたくさんできる!」です。
今日は以下の記事からの気づきです。
渋滞イライラ、マスク氏 トンネル超高速掘進の現実味:日本経済新聞
本記事を要約すると、米起業家のイーロン・マスク氏が、「ループ」と呼ぶ新たな交通システムの実現に向けて、地下トンネルの建設コストを従来の10分の1、掘進速度は日本で高速掘進と呼ばれるスピードの数倍から10倍程度を目標にしている、と報じています。
速度向上の5条件
掘進速度を現在の数倍から10倍まで引き上げることは、本当に可能なのでしょうか。
大林組の副社長も務めた金井誠氏は、「以下の5つの条件が揃えば、マスク氏の掲げる目標も、決して不可能ではない」としています。
①トンネルの直径が4~5m
マスク氏はテスラの自動運転EV車1台が走行する前提で直径約3.6mとしており、クリアしています。
②地盤が一様で水圧が比較的低い(0.1メガパスカル以下)均質な土砂地盤
このような地盤は米国に多いとされています。
③掘削空間内に既設の地下埋設物が輻輳(ふくそう)していない
建設地によりますが、地下鉄がない米ラスベガスのような都市であればさほど問題ではないそうです。
④掘削土が産業廃棄物としての規制を受けない
⑤広大な作業基地を確保可能で、セグメント製作・保管ヤードや掘削土仮置きヤードを確保できる
④、⑤の条件については本記事では明確にされていませんでした。
本記事では①~③の条件が整ったとして試算し、月進約2.3kmと結論付けられています。
それでもマスク氏が当面の目標に掲げる月進約6.4kmの3分の1強に過ぎません。
今後の改善案3つ
本記事では、マスク氏が今後の速度向上案を以下の3つ挙げていると書かれていました。
①同時掘進
一般的なシールド機では前方で掘削した後に後方でセグメントと呼ぶ円弧断面の部材をリング状に組み立てて、トンネルの壁を構築しています。
これを掘削している最中に空いた箇所でセグメントを組み立てる案です。
実現すれば、時間を2~4割削減できるとされます。
よって同時掘進をうまく取り入れれば、月進3kmが視野に入ってきそうです。
②地上発進・地上到達
一般的なシールドトンネル工事ではまず、掘削機の発進地点と到達地点に、地盤を垂直に深く掘り下げ、掘削機が安全に発進できるように地盤を凍結するなどして防護します。
これを、掘削機が斜めに掘り進むことで全て無くす案です。
この案は、掘進速度そのものを高めるのには寄与しないものの工期を年単位で短縮できる可能性がある案です。
日本では実際に、大林組が首都高中央環状品川線大井地区トンネル工事などに適用したURUP(ユーラップ)工法として実現例があります。
(画像は大林組のHPより)
③自動化
最後の案は、掘削機の遠隔化や自律化です。
金井氏は「労働時間の制約を受けにくくなるので、より工事ははかどるだろう」と言います。
この点に関しては自動運転に強いマスク氏なら得意分野だと思います。
最後に
トンネルを建設する際、前方で掘削、後方でセグメントを組み立ててリング状の壁を築く作業を1台の掘削機で行っていたのは初めて知りました。
マスク氏は地下トンネル「LVCCループ」(2.7km)を既に22年1月に開かれたテクノロジー見本市「CES 2022」でお披露目し、1日に最大1万7000人の来場者を輸送してみせたそうで、今後の実現のイメージもできています。
(画像はMotor-Fanより)
今後は、空飛ぶ車なのか、地下トンネルなのか、どちらが普及するんでしょうか。
空飛ぶ車は1回あたりのコストが高そうで、地下トンネルは建設とメンテナンスコストが高そうで、場所次第ではありますが、私の直感的には前者の方が普及しそうと思いました。
以上、今日の気づきは「米国に地下トンネルがたくさんできる!」でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!